
栃耳鼻地方部会長に就任にあたって
自治医科大学耳鼻咽喉・小児耳鼻咽喉科
伊藤 真人
このたび2024年4月をもちまして、獨協医科大学・春名眞一教授に替わり、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会栃木県地方部会長を賜りました。昨今厳しさを増す医療を取り巻く環境の中、少しでも会員の皆様の助けになるように尽力いたす所存であります。
現在、栃木県地方部会の会員数は勤務医師69名、診療所医師77名の計146名で構成されています。必修医師卒後臨床研修が始まってまもない2007年の会員数は勤務医師60名、診療所医師90名の計150名であったことから、全体としては若干の減少傾向にあります。しかし栃木県全体の人口は、2007年の202万人からゆっくりとし減少傾向にあり、2024年5月1日現在は187万人であることから、耳鼻咽喉科医師の人口比は人口1万3千人に1人と不変なのですが、勤務医師とくに大学勤務医師の減少傾向が伺えます。さらに栃木県の人口構成比を見ると、65歳以上の高齢者人口が、2007年の19%から2024年には30%(11%増)に増加しており、人口の高齢化が進んでいることから、耳鼻咽喉科の患者層も高齢者の割合が増加しています。反対に、15〜64歳の青壮年人口の減少が顕著(8%減)で、働き盛りの青壮年が首都圏へ流出していることが問題である。一方、14歳以下の小児人口は2007年の28.5万人(人口の14%)から若干減って入るものの21.6万人(12%: 2%減)にとどまっている。栃木県では、県北と県南では人口動態が異なっており、こどもの割合は県南地域に多いが、このことは県南地域が首都圏の通勤圏内となり比較的子育てをし易い環境にあることを示唆しています。
医療提供体制にも偏りがあり、耳鼻咽喉科常勤医師の在籍する病院の多くも宇都宮市以南の県南地域に集まっている。このうち、3名以上の複数の耳鼻咽喉科勤務医を擁する病院の内訳は獨協医大、自治医大、国際医療福祉大の大学群と済生会宇都宮病院、足利赤十字病院、佐野厚生病院などの病院群であることから、特に時間外救急の受け入れ施設が少なく、特に大学病院は多数の救急対応に忙殺されています。一方で、地域の診療所では新型コロナ感染症流行を契機として、これまでの処置に重きを置いた患者の受診動機に変化がみられるとともに、OCTや長期処方の普及、今後のリフィル処方の浸透などで大きな変革期を迎えようとしています。これからは、ますます病院と診療所との病診連携を進めて、適切な紹介・逆紹介により、病院耳鼻咽喉科勤務医師の負担を分散させるとともに、診療所の効率的運営をはかるなど、WinWinな関係を構築していくことが必要です。
地理的に見ると、北関東道の開通により栃木県は北関東の中心といえる位置にあり、県境を越えた患者の流れも活発になってきています。今後は北関東の横のつながりを密にして、県の枠を超えた一つの北関東耳鼻咽喉科医療圏を形成し、その中心となっていくことが望まれます。
学術面や医療技術面から鑑みても、栃木県地方部会には我が国を代表するような、耳鼻咽喉科の様々なサブスペシャリティー分野の優れた専門医師が多数会員として在籍しています。それぞれの会員の皆さまが病院・診療所の枠を越えて協力することで、耳鼻咽喉科頭頸部外科のプレゼンスを高めるとともに、より良い医療提供体制を構築していくために、栃木県地方部会長として尽力していく所存ですので、会員はじめ関係の皆様のご協力を戴けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。