
獨協医大/深美悟准教授に聞く
誰でも起こり得る 突発性難聴
詰まる感覚や耳鳴り…
早期診断、治療が重要
ある日突然、何の前触れもなく聴力が低下する「突発性難聴」。音を神経信号に変換する内耳の蝸牛(かぎゅう)や聴神経に障害が起きる感音性難聴の一つだ。原因不明で治療法も確立されていないが、獨協医大耳鼻咽喉・頭頸(けい)部外科の深美悟(ふかみさとる)准教授は「誰にでも起こり得る病気。完治する割合は3分の1といわれ、早期診断、早期治療開始が重要」と訴える。3月3日は「耳の日」。(外山雅子(とやままさこ))
深美准教授によると、突発性難聴は片耳に起きることがほとんどで、突然聞こえなくなるため、発症した時刻や何をしていたのかを説明できるのが特徴。原因はウイルス感染血流障害、ストレスなど諸説あるが、明らかになっていない。2001年の厚生労働省研究班調査によると、治療を受けている人は年間約3万5千人と推定されている。
症状は難聴のほか、耳が詰まった感じや耳鳴りを伴うことが多く、半数の割合でめまいが起きる。メニエール病や聴神経腫瘍、外リンパ瘻(ろう)でも似たような症状が見られるため、磁気共鳴画像装置(MRI)検査などによって鑑別することもある。再発はしないとされており、繰り返す場合は他の疾患が考えられる。
重要なのは、一刻も早く適切な治療を受けること。治療しても完治する人の割合は3分の1、改善しても元には戻らない人が3分の1、不変な人が3分の1といわれ、耳鳴りの後遺症で生活の質に影響が出る人もいるという。深美准教授は「治療開始の時期が早ければ早いほど、治る確率も高いとされている。1カ月も放置しては駄目」と強調する。
治療法としては、炎症を抑えるステロイドホルモン剤の投与が最もよく行われている。加えて、ビタミンB12や内耳循環改善薬などを服用する。安静も必要となるため、同大病院では基本的に7〜10日間の入院治療になる。通院によるステロイドの点滴投与や内服を行う病院もある。
高気圧酸素療法も有効といわれている。カプセルに入り、高濃度の酸素を吸うことで、内耳の機能を高める。県内では同大病院や上都賀総合病院などが実施しているという。
さらに、画期的な治療法として期待されているのが、リコンビナント・ヒト・インスリン様細胞成長因子1(IGF−1)を蝸牛に直接投与する治療法。IGF−1には、内耳の機能を復活させる効果があるとみられている。現在治験中だが、将来的に認可されれば治療法が大きく変わりそうだ。
深美准教授は「(突発性難聴は)ストレスを受けやすい働き盛りが発症することが多い。急に聞こえに異常を感じたら、すぐに受診を」と呼び掛けている。