
2002/07/31/ 下野新聞掲載記事
嗅覚障害 放置しないで
独協医大耳鼻咽喉科 吉田講師に聞く
ガス漏れ、腐敗察知できず
花粉症などで鼻粘膜炎症 投薬、日帰り手術で治療
花粉症や蓄膿(のう)症など、鼻のトラブルを抱えていると、嗅(きゅう)覚障害を併発している可能性も高い。においが分からないと、ガス漏れや腐った食品などの異臭に気付かず、事故につながる危険性がある。独協医大耳鼻咽喉(いんこう)科気管食道科の吉田博一講師は「料理などが焦げた時、周りの人がにおいに気付いているのに、自分だけ気付かないようなことがあれば嗅覚障害を疑ってみて」と話している。八月七日は「鼻の日」。
鼻の上方(脳に近い部分)には、においを感じ取る嗅細胞がある。鼻の中に異常があると、この嗅細胞自体が傷ついたり、嗅細胞までにおいが届かず嗅覚障害を起こす。
原因は蓄膿(のう)症や鼻たけ、アレルギー性鼻炎などによる鼻粘膜の炎症や腫れ、ウイルス性のかぜによる嗅細胞の障害、鼻中隔わん曲症(鼻筋の曲がり)など鼻腔(びこう)形態の異常などが多い。「鼻水や鼻づまりがひどい人は注意」という。
鼻の中に異常はなくても、頭部外傷や脳腫瘍(しゅよう)が原因でにおいが分からないケースもあり、この場合は脳外科的アプローチが必要になる。
原因は鼻内所見やレントゲン画像、アレルギー検査などで調べる。障害の度合いは「バラのにおい」「焦げたにおい」など五種類のにおいのもとをかぎ分ける基準嗅覚テストで検査する。
原因となる病気が見つかれば、治療することで嗅覚障害も改善する可能性がある。粘膜が腫れて鼻の中が狭くなった状態なら手術する場合もある。アレルギー性鼻炎やかぜの場合は投薬、鼻スプレー、点鼻薬などを用いる。
嗅覚障害は、それだけで生命に危険が及ぶことはないものの、ガス漏れや食品の腐敗などの異臭が分からないために「自己防衛としての機能が薄れる」と吉田講師は指摘する。
においや風味が分からず、食事がおいしく感じられないなど生活に支障を来すこともあり、軽視できない。
■7日に無料相談
日本耳鼻咽喉科学会栃木県地方部会は七日、宇都宮市宮園町、東武宇都宮百貨店四階で「鼻の日」無料相談を行う。午前十一時から午後四時まで。吉田講師ら専門医三人が、いろいろな鼻の症状について相談に応じる。