
2002/03/01/ 下野新聞掲載記事
選択肢広がる難聴治療
改良進む補聴器 人工内耳の開発
自治医大の石川医師に聞く 検査受け正しく装着を
高性能補聴器の普及、人工内耳システムの開発などで、耳の聞こえが悪くて治療を希望する人の選択の幅が広がっている。しかし専門医は「雑音が大きい、言葉が聞き分けられないなど、補聴器の正しい装着効果が得られていないケースは意外に多い」と指摘、補聴器適合判定医のいる医療機関での適合検査を勧めている。
自治医科大耳鼻咽喉科の石川浩太郎医師(34)は、補聴器選択に関してこう前置きする。「補聴器は眼鏡と同じ。個人個人に合わなければ意味がありません。それには本人の正確な聴力評価が必要となります。専門医や補聴器技能者による検査、調整を受けないで販売店やデパートで購入した結果、合わないと言って来院するケースは多いのです」
厚生労働省が主催する研修会に参加して「補聴器適合判定医」に認められた常勤医師がいる医療機関であれば、適合検査は保険が適用される。「補聴器を装着し、聴力レベル、言葉の聞き取り能力を測定します。静かな環境だけでなく、雑音の中にいる環境もつくりだして判定、その結果を受けて補聴器を調整する」と、石川医師は一連の流れを説明する。
機器については近年、デジタル補聴器の改良が進み、性能が向上している。特に雑音抑制機能に加え、言葉の輪郭を際だたせる子音強調機能が強化されているという。
また、従来の方法で聴力が回復しないケースでは、人工内耳手術という選択もある。小児では二歳以上を対象とする。十八歳以上の成人の場合は、主に原因不明の進行性難聴や突発性難聴、髄膜炎などによる中途失聴者に行う。
方法は、直接内耳に穴を開け電極を差し込み、外部に装着した送信機器で音声を電気信号に変えて電極に送る。それが聴神経を刺激し大脳に音を認識させる仕組み。術後、半年から一年のリハビリが必要となる。自治医大で手術した中には、電話での会話ができるようになった人もいたという。
手術の総費用は四百万円ほどだが、健康保険、高額療養費制度、心身障害者(児)医療費助成などが受けられるため、患者負担は少額となる。このため石川医師は「人工内耳手術は県内では自治医大しかできないこともあって、症例は十五人だけ。残念ながら周知されていない。あきらめてしまっている高度な難聴の方には、もう一つの選択肢になりえると思う」と相談、受診を勧めている。