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 2004/08/05/ 下野新聞掲載記事

自治医大 市村恵一教授に聞く

鼻血の治療法 最新事情 内視鏡手術が一般的

オスラー病には皮膚移植も

 八月七日は「鼻の日」。誰もが経験のある鼻血は大出血する場合もあり楽観視できない。医療機関での止血は、鼻腔(びこう)にガーゼを詰め出血部位を押さえる方法から内視鏡による手術へと変わってきている。オスラー病という遺伝病を原因とする鼻血には、皮膚移植による止血も行われている。鼻血の最近の治療法を、自治医大耳鼻咽喉(いんこう)科学教室の市村恵一教授に聞いた。
 内視鏡手術は鼻腔に内視鏡を入れて出血している個所を見つけ、電気で焼く。「手術」と呼ばれるが、局所麻酔で済み、貧血が強かったり、血圧が安定しないときなどを除けば基本的に入院は必要ない。
 止血のため鼻腔にガーゼを詰めると、痛くて息苦しい上に、引き抜いたときに再出血したり、まれではあるが、詰めたガーゼから感染したりというデメリットがある。内視鏡を使った手術には、当然、こうした心配はない。
 出血が重症の場合は、血管に塞(そく)栓物質を詰めたり、直接血管を出して縛ったりと幾つかの治療法があるが、内視鏡による手術は患者の体への負担が少ない。
 オスラー病は、生まれつき血管の壁が弱い優性遺伝性疾患で、十万人に一−二人程度の割合で発症する。血管の壁が弱いため鼻血が頻繁に出てしまう。手術では大腿(だいたい)部の皮膚をとり、鼻の中の粘膜に移植する。
 米国では一九六〇年代から実施されてきたが、日本ではほとんど行われなかった。市村教授が現在、全国で最も多い術数を手掛ける。市村教授は「鼻粘膜の持つ重要な機能を残すために、粘膜の後半部を残すので鼻血がゼロになるわけではないが、頻度を劇的に減らせる」と説明する。
 家庭で鼻血が出た場合は、どうすればいいのだろうか。ティッシュなどを詰めがちだが、市村教授は「ティッシュの出し入れで再出血することもある。人さし指で小鼻を横から中心に向け、五分間ほど押さえているのが最もよい」と、指による止血を勧める。
 重症な鼻血を見分けるには、「通常の出血は二、三分なので、鼻を五分間ほど押さえていれば止まる。これで止まらなければ異常と考えてもいい」。毎日、鼻血が出ても、鼻を押さえて止まれば心配ない。ただ、ひっかき傷があったり、刺激で血管が表面に出ていたりすることが考えられるので、その場合はその部分の粘膜を焼いてもいいという。
 子どもが鼻血を頻繁に出す場合は、アレルギー性鼻炎が原因の場合が多いが、成人の場合は何らかの病気がある可能性もあり注意が必要だ。
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 日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は七日午前十一時から午後四時まで、宇都宮市宮園町の東武宇都宮百貨店四階で「鼻の日」無料相談を行う。専門医三人が鼻に関する相談に応じる。予約不要。