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 2005/02/24/ 下野新聞掲載記事

気になる? 子どもの聞こえ

NHO栃木病院耳鼻咽喉科 田代昌継医長に聞く

注意必要な 滲出性中耳炎 免疫未熟、多くは自然治癒

繰り返すなら処置必要

 鼓膜の内側にある中耳の中に液がたまり、聞こえが悪くなる滲出(しんしゅつ)性中耳炎は、子どもに多く見られる。宇都宮市中戸祭一丁目の国立病院機構(NHO)栃木病院耳鼻咽喉科の田代昌継医長が「かかったことのない子どもの方が少数派かもしれない」というほど、一般的な病気とされる。しかし、幼・小児期に聞こえの悪さを放置すると、授業など学校生活への影響も懸念され、早期に専門医を受診し適切な処置を受けることが必要だ。三月三日は「耳の日」。

 上気道炎に続発してよく見られる滲出性中耳炎は、多くが自然治癒するので問題はない。こうしたケースではないにもかかわらず、返事をしない、テレビの音量を必要以上に大きくするなどの時は、知らないうちに滲出性中耳炎になっている可能性がある。
 子どもに多く見られる原因としては、感染に対する免疫が未熟であること、アデノイド(咽頭扁桃)肥大、耳管の解剖学的特徴が影響していると考えられる。
 原因として鼻やのどが炎症を起こしている上気道炎が主因と考えられる場合は、鼻汁を吸引したりのどの消毒が第一。鼻炎などが治療できれば、滲出性中耳炎も治まっていく。
 田代医長によると、外科的処置が必要なのは、繰り返し発症する場合や聴力がかなり低下したときなど。
 全身麻酔で鼓膜をわずかに切開して、米粒程度の「換気チューブ」を切開部分にはさむ。チューブで中耳と外耳が換気され、中にたまった液もチューブを通って排出される。個人差があるが、チューブは数カ月から一年ほどで自然に外側に抜け落ちるという。その後、必要に応じて再挿入することもある。
 「滲出性中耳炎と診断すると、『高度の難聴になってしまうのですか』と心配する父母も多いのですが、専門医による適切な処置ができれば、重症化することは、まずありません」と田代医長。プールも水浴び程度なら問題はないという。
 ただし、呼び掛けに対して反応が鈍いなどの兆候が見られる場合には、早い時期に専門医を受診することが大切となる。