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 2005/08/04/ 下野新聞掲載記事

進む花粉症の低年齢化

薬物、手術、免疫 療法選択を

獨協医大・盛川講師がアドバイス

 八月七日は「鼻の日」。日本人の六人に一人は、鼻アレルギーの代表「スギ花粉症」患者だという。今シーズンは花粉が大量飛散し、新たに発症した患者も多かった。飛散シーズンが終わり、症状が治まると忘れられがちなスギ花粉症だが、鼻の日を前に獨協医大耳鼻咽喉科気管食道科の盛川宏講師が治療の選択などについてアドバイスする。

 花粉症は、花粉の刺激で免疫細胞がIgEという抗体をつくり、肥満細胞に付着した抗体に花粉が結合することで、肥満細胞がヒスタミンなどの化学物質を放出。ヒスタミンが鼻や目の粘膜の受容体にくっついて起こる。
 獨協医大耳鼻咽喉科気管食道科が一九九七年度に行った大規模調査では、ダニやほこりによる通年性アレルギー性鼻炎があるのは18・7%、花粉症では「スギ」が最も多く16・2%だった。
 スギ花粉症は三十、四十代では有病率が25%を超えており、四人に一人以上の割合で患者がいることになる。この時点では十、二十代の有病率は20%に届いていないが、盛川講師は「年々低年齢化しているという実感がある」と危惧(きぐ)する。
 今のところ選択される治療法は、薬物、手術、減感作(免疫)の三つ。
 薬物の中でも市販薬は、使いすぎると眠気やのどの渇きなどの副作用が強く出たり、外用点鼻薬では急に効果が少なくなって症状が悪化するケースも報告されている。
 手術は、レーザーや電気で鼻の粘膜を凝固させ、鼻粘膜を縮小させたり、アレルギー反応が起こりにくくさせる。この方法に関しても盛川講師は「簡単にいうと鼻の粘膜をやけどさせるのです。しかし、人間の身体には復元力がありますから、何年かたつと効果が薄れ、数回の手術が必要になることもあります」と解説する。
 根治が期待できて有効性が高いことが分かっているのは減感作療法。アレルゲンを最低二年間、皮下注射して、アレルギー反応が起こりにくくさせる。打ち込むアレルゲンの質も改善され、約七割に効果があるとされる。定期的に二年以上も医療機関に通わなければならない点で社会人には不都合。注射は子どもに敬遠されるというマイナス面もある。
 このため同病院では三年前から、アレルゲンをグミでコーティングしたものを口に入れ、粘膜から吸収させる治療法の臨床研究を進めている。
 盛川講師は「患者数は今後も確実に増える。症状が出たら、まずは専門医に相談すべき。薬物、手術、減感作療法の中から、患者さんの社会的な立場も勘案してベストの選択をしてくれるはず」と受診を勧めている。