日本耳鼻咽喉科学会 栃木県地方部会
 

日本耳鼻咽喉科学会 栃木県地方部会へようこそ

日本耳鼻咽喉科学会 栃木県地方部会

 2011/02/26/ 下野新聞掲載記事

重い病気も潜む「めまい」

3月3日「耳の日」

自治医大・石川医師に聞く

診察時症状の説明具体的に

 誰もが経験を持つだろう「めまい」。しかし、その言葉に含まれる症状は幅広く、原因も耳、脳、循環系などさまざまだ。自治医大耳鼻咽喉科の石川浩太郎(いしかわこうたろう)医師は「受診する際は、単に『めまいがして』と言わず、起こり方や状態を具体的に伝えることが速やかな診断につながる」と、症状説明の重要性を話す。3月3日の「耳の日」を前に、耳に関連の強い特徴的なめまいの症状について石川医師に聞いた。(若林真佐子(わかばやしまさこ))

 「クラクラ」「ぐるぐる」「フワフワ」「気が遠くなるような」…などと、「めまい」の症状はさまざま。また、「立ち上がったとき」「寝返りを打ったとき」など誘発される状態や、持続時間なども異なる。石川医師は「軽いめまいでも重い病気が隠れていたり、その逆もある。怖いのは脳梗塞や脳腫瘍など脳の病気が隠れているケース。詳しい説明がいかに大事かを、まず理解してほしい」と力を込める。

 耳に関連する代表的なめまいの病気は「メニエール病」と「良性発作性頭位めまい症」。メニエール病は、初めは低音が聞こえづらくなり、ぐるぐると回転性のめまい発作を繰り返しながら聴力が悪化する難病で、患者は30〜40代の女性の割合が多い。石川医師は「日常や仕事に支障をきたすため、いかにめまいの発作や聴力低下を抑えるかが大事」と話す。

 病気は内耳のリンパのむくみ(内リンパ水腫)によるものだが、その原因はまだはっきりしない。しかし最近、「ストレス説」が注目され、治療でも、ストレス解消にもなる有酸素運動の有効性が確認されている。そのため、むくみをとるなどの飲み薬のほかに、ジョギングや水泳などを積極的に勧めているという。改善が見られなければ手術に至ることもある。


 一方の「良性発作性頭位めまい症」は、寝返りや振り向きざまなど頭の位置を急に変えたときにめまいが起きる。原因は、本来、内耳に固定されているはずの「耳石(じせき)」の一部が外れ、体の回転を感じる「半規管」という管の中を転がるため。


 聴力低下などはなく、基本的には「耳石」が管から排出されればよいため、石川医師は「寝込まずにむしろ動いてもらった方がよい。自然に流れ出れば治ります」とアドバイスする。


 つい自己判断してしまいがちな身近な症状のめまい。「極端に怖がる必要はないが、発作が続くなどあれば一度受診を」と石川医師は話している。