
2011/04/08/ 下野新聞掲載記事
東日本大震災
地震酔い
脳の情報システム混乱
揺れてないのに揺れて…
対処に深呼吸、水飲み有効
東日本大震災以降、地震が起きていないのに「揺れているような気がする」「めまいを感じる」といった症状を訴える人が県内でも増えている。震災時の衝撃と、相次ぐ余震による「地震酔い」の可能性があるという。専門家は「余震が収まれば症状はなくなるはずだが、吐き気などが続くようなら診察を受けてほしい」としている。
宇都宮地方気象台によると、3月11日の震災発生から同月末までに、県内で震度1以上を観測した回数は、東北地方以外を震源地とするものを含め、約300回に上る。頻繁に地震が起きる中、県内の病院には「地震酔い」の症状を訴える人が相次いでいるという。
米国の大学で平衡機能などの研究に携わり、めまいについて詳しい添田耳鼻咽喉科(宇都宮市泉が丘4丁目)の添田一弘(そえだかずひろ)副院長は「船を下りて陸に上がっても、まだ揺れているような感じがする『後揺れ症候群』のようなもの」と説明する。
人間の脳幹には、後の体験に役立たせるために、直前に体験した加速度などの情報を蓄える「速度蓄積機構」というシステムがある。震災時の衝撃や、相次ぐ余震の揺れは刺激が強く、感覚が残りやすいため、「地震酔い」が起きるという。
震災に伴う心理的なストレスにより、感覚が敏感になっていることも要因の一つとみられる。「感覚が敏感になると、心臓が動いているだけでも、それを揺れと感じてしまうことがある。生活環境が変わる季節でもあり、自律神経の働きの乱れも影響している」
対処法として、大きく深呼吸をしたり、水を飲んだりすると落ち着くという。添田副院長は「余震がなくなってもめまいなどが続く場合は、平衡感覚が低下する別の病気の可能性も考えられるので、耳鼻科か内科で相談を」と話している。(小野裕美子(おのゆみこ))