
8月7日は「鼻の日」
獨協医科大病院
中山医師に聞く
増える新型副鼻腔炎
重度の嗅覚障害が特徴
鼻の奥の空洞(副鼻腔(ふくびくう))に炎症が起き、鼻水、鼻詰まり、嗅覚障害、顔面痛など不快な症状をもたらす副鼻腔炎。患者数の多い一般的な病気だが、最近は従来の治療法が効きにくい新型の「好酸球性副鼻腔炎」が増えつつある。重度の嗅覚障害が特徴で、生活の質(QOL)を下げるおそれがある。獨協医大病院耳鼻咽喉科の中山次久(なかやまつぐひさ)医師に最新事情を解説してもらった。8月7日は「鼻の日」。
◇特徴◇
従来の副鼻腔炎は、細菌感染をきっかけに「好中球」という白血球が鼻に集まって発症する好中球性。それに対し、好酸球性副鼻腔炎は「好酸球」という白血球が過剰に集まることで発症する。
原因は明らかになっていないが、中山医師は「都市化された地域で患者が多い」と指摘。衛生的になりすぎた環境も一因のようだ。好中球性は投薬などで治癒しやすいこともあり、相対的に好酸球性が増えているという。
好酸球性の特徴は嗅覚障害。好中球性でも嗅覚障害は起きるが、好酸球性の方が障害が早く強く出る。患者自身が「もしかしたら」と判断する一つのポイントになりそうだ。
ぜんそく患者に発症が多いのも特徴。鼻と気管は気道が同じためだ。「特に成人後に発症したぜんそく患者はリスクが高い」と中山医師は注意を促す。
◇治療◇
好中球性にはマクロライド系抗生物質が有効だが、好酸球性にはほとんど効かない。そのため、最良の治療法は手術だ。複雑な構造の副鼻腔を一つの大きな空洞に(単洞化)する。好酸球性の膿(うみ)膿はガムのように粘性が強く吸引しにくいが、単洞化によって鼻洗浄がうまくいくようになる。
手術は鼻の穴から内視鏡で行い、時間は2〜3時間程度。2日後に止血用ガーゼを抜く処置が患者の大きな負担だったが、最近は「溶ける綿」も開発され、苦痛はぐっと軽減されつつある。
「ただ、手術も早期にやらないと効果はない」と中山医師。鼻詰まりがひどくなってから受診する患者が多いが、そのころにはにおいを感じる神経の損傷が進んでいることも多い。「においのなさをずっと我慢することなく、早めの受診を」と呼び掛けている。
(荻原恵美子(おぎわらえみこ))