
2012/03/02/ 下野新聞掲載記事
3月3日「耳の日」
済生会宇都宮病院
新田医師に聞く
難聴治療し うつも予防を
補聴器、脳衰える前に
加齢に伴い増えていく難聴。70代を超えると半数がなるとされ、聞こえにくさから人との接触を避けがちとなって、うつを誘発しやすくなる。済生会宇都宮病院の新田清一(しんでんせいいち)耳鼻咽喉科診療科長は「軽度のうちにトレーニングをきちんとしながら補聴器を正しく調整して使うことで今よりずっとことばの聞き取りが良くなる。まずは耳鼻咽喉科で診断してもらうことが必須だ」と呼びかける。3月3日の「耳の日」を前に難聴治療のポイントなどを聞いた。
聞こえにくさは40代くらいから起きはじめ、中程度以上の難聴は60代で3割がなるとされる。老化による老人性難聴が圧倒的に多い。
老人性難聴は、耳の奥にある蝸牛(かぎゅう)の力の衰えが原因だ。蝸牛は、音を電気信号に換える“変換器”の役割をしている。難聴だとこの電気信号を脳に伝える力が弱くなり、聞き取りが悪くなる。つまり弱くなったのは蝸牛であり、脳ではない。
このほか、長期間騒音にさらされたことで起こる騒音性難聴や、動脈硬化も原因となる。イヤホンを使い大音量で音楽を聴き続けたため難聴を患う人も増えているという。
耳あかや中耳炎など治る難聴もあるが、老人性難聴など治らない難聴は補聴器で補うことが勧められる。
補聴器を使用する際大事なのは「医療的トレーニング機器」との視点だ。弱くなった蝸牛の力を補聴器で補い、聞こえていたときの脳の状態に戻すトレーニングが必要だ。補聴器は眼鏡と違って、付けてすぐ効果は出ない。難聴の脳はたくさんの音をしばらく聞いていないので、使い始めた当初は、脳が音をうるさく感じる。多少のうるささは長く付けることで、脳が慣れてくる。少しずつ音を上げながら補聴器を頻繁に調整していくと、言葉として聞き取れるようになってくる。それには3カ月ほどかかる。
新田医師は「『年だから』『どうせ補聴器は役に立たない』と諦めている人もいるが、きちんと調整してトレーニングした場合、人生が変わったという人は多い。うまくいかない人はまず耳鼻科、さらに専門的なトレーニングができる総合病院で相談してほしい」と話した。
■耳の無料相談/宇都宮で4日
日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は3月4日、東武宇都宮百貨店4階駐車場入り口で「耳の日」無料相談会を開く。
済生会宇都宮病院、自治医大病院、獨協医大病院の専門医3人が、耳をはじめ鼻やのどについての相談に応じる。午前11時から午後4時まで。希望者は直接会場へ。