
2013/02/22/ 下野新聞掲載記事
獨協医大深美准教授
「耳の日」前に忠告
「耳かき」細心の注意必要
内耳の窓破ると難聴にも
家族と話しながらソファで−。ペットがいるリビングで−。普段、軽い気持ちで耳かきをしていないだろうか。耳かき棒や綿棒などが耳の奥に刺さると、めまいや難聴といった重篤な症状を招く「外傷性外リンパ瘻(ろう)」になってしまう。3月3日の耳の日を前に、獨協医大耳鼻咽喉科頭頸部(けいぶ)外科の深美悟(ふかみさとる)准教授は「日常的な行為に大きな危険があることを再認識してほしい」と注意を呼び掛ける。
外リンパ瘻は、鼓膜の内側にある内耳の二つの窓(卵円窓、正円窓)が破れ、中のリンパ液が出てしまう病気。内耳は「平衡機能」と「聞こえ」の作用をつかさどるため、損傷すると、めまいや進行性難聴が引き起こされる。
耳の穴の入り口から鼓膜までの外耳道は約3センチ。入り口付近は毛が生えた軟骨部で、鼓膜近くになると薄皮の骨部となる。骨部は非常に痛みを感じる部分なので、自分の力で耳かき棒を奥まで入れることは通常ありえないが、他人の肘がぶつかったり、猫に飛びかかられたりして奥まで刺さってしまうケースが後を絶たないという。
深美准教授は「耳を掃除することは必要だが、安易にやり過ぎている。周囲の安全を十分に確認し、集中してやってほしい」と強調する。
鼓膜が破れただけなら自然に治ることが多いが、卵円窓や正円窓が破れたら手術が必要となる。「耳かき後、キーンという強い耳鳴りやめまい感が続いたら、早めに受診してほしい」と深美准教授。内耳の状態が悪化すると、手術しても治らなくなる。
このほか、強く鼻をかみすぎたり、くしゃみを中途半端に我慢したりすることにも注意が必要。内耳に負荷がかかって外リンパ瘻になることもあるという。(荻原恵美子(おぎわらえみこ))
■3月3日に医師無料相談/東武宇都宮百貨店
日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は「耳の日」の3月3日午前11時〜午後4時(受け付けは3時半まで)、宇都宮市宮園町の東武宇都宮百貨店4階駐車場入り口で無料相談を行う。
相談医は、佐野厚生総合病院の高橋瑞乃(たかはしみずの)医師、自治医大の石川浩太郎(いしかわこうたろう)医師、獨協医大の金谷洋明(かなやひろあき)医師。相談内容に関する資料などがあると望ましいという。