
2014/02/28/ 下野新聞掲載記事
早期発見難しい真珠腫性中耳炎
難聴、めまい…命の危険も
3月3日「耳の日」
耳だれ経験者は要注意
ごく一般的な耳の病気「中耳炎」の中に、放置すると命の危険につながるものがある。中耳内に入り込んだ皮膚組織が骨や神経を溶かしていく「真珠腫性中耳炎」だ。目立った初期症状がないため早期発見が難しい病気だが、獨協医大耳鼻咽喉・頭頸部(けいぶ)外科の深美悟(ふかみさとる)准教授は「1度でも耳だれ(耳漏)が出たことがある人は耳鼻科を受診してほしい」と呼び掛ける。3月3日は耳の日。(荻原恵美子(おぎわらえみこ))
▽骨や神経を破壊
鼓膜の奥にある中耳腔は、耳管で鼻の奥ののどとつながり、空洞となっている。だが、耳の換気が悪かったり、中耳腔の粘膜が正常に機能しなかったりすると、中耳腔内が長期間陰圧になり、弱い鼓膜上部にくぼみができてしまう。中耳腔に鼓膜の皮膚成分が入り込むと、真珠のような塊「真珠腫」ができ、中耳腔で徐々に大きくなっていく。
中耳腔の中には聞こえに関わる耳小骨があり、周囲には味を感じる神経や顔面神経、体のバランスをつかさどる三半規管や音を感じる神経がある。真珠腫は大きくなりながら骨や重要な神経を破壊していくため、難聴やめまい、味覚障害、顔面まひなどを招く。最悪の場合は脳が侵され、致命傷につながる可能性もある。
▽治療は手術のみ
急激な痛みを伴わず、知らず知らずのうちに進行する難しい病気だが、気付くポイントは耳だれ。深美准教授は「必ず耳だれが出るわけではないが、過去に耳だれが出たことがある人の中には真珠腫が隠れている可能性がある」と指摘する。
治療法は手術しかない。耳の後ろを切開し、病変を取り除く。同病院が年間約100件実施する耳の手術のうち、6割は真珠腫性中耳炎が占めるという。
▽「滲出(しんしゅつ)性」が原因
原因として最も多いのは、幼少期にかかりやすい滲出性中耳炎。「中耳腔内がずっと水たまり状態になるため、正常な粘膜機能が働かなくなってしまう。高齢者の真珠腫性中耳炎も幼少期の滲出性中耳炎が原因というケースがほとんど」と深美准教授。医師の指示に従い、幼少期にしっかり完治させておくことが必要だ。
頻回な鼻すすりも禁物。中耳腔内の陰圧につながり、真珠腫ができやすくなってしまうという。
日本耳鼻咽喉科学会県地方部会/医師が耳の無料相談/来月2日宇都宮
日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は3月2日午前11時〜午後4時(受け付けは午後3時半まで)、宇都宮市宮園町の東武宇都宮百貨店4階駐車場入り口で「耳の日」無料相談を行う。
国立病院機構栃木医療センターの酒井瑞乃(さかいみずの)医師、自治医大の佐々木徹(ささきとおる)医師、獨協医大の後藤一貴(ごとうかずたか)医師が相談に応じる。