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 2015/02/27/ 下野新聞掲載記事

滲出性中耳炎に初ガイドライン

3月3日は「耳の日」

治療を均質化 悪化予防へ

「3カ月以上」が外科対象

作成委員長・伊藤教授(自治医大)に聞く

 子どもの9割が就学前に1度は罹患(りかん)し、難聴原因の最多を占める滲出(しんしゅつ)性中耳炎。日本耳科学会と日本小児耳鼻咽喉科学会はことし1月、初めての「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン」を作成した。診断・診療方法が均質化し、症状の悪化を防ぐ効果が期待される。3月3日の「耳の日」を前に、ガイドライン作成委員会委員長を務めた自治医大とちぎ子ども医療センター小児耳鼻咽喉科の伊藤真人(いとうまこと)教授にポイントを聞いた。(荻原恵美子(おぎわらえみこ))
 滲出性中耳炎の診断・診療は、それぞれの医師が経験則に基づいて行っているのが現状。長引く疾患でもあるため、「『ずっと通院しているのに治らない』『医師によって言うことが違う』と患者が混乱することも多い」と伊藤教授。
 そのためガイドラインでは、医師向けに既往歴、生活環境、鼓膜所見、聴力といった診断ポイントを示した。
 中耳貯留液(中耳腔の中の水)の継続状態によって病期を分類。3カ月以内に自然治癒することも多いため、3カ月以上を「慢性期」として外科的な治療の対象とした。「片側性か両側性か」「小声が聞き取りにくい中等度以上の難聴があるか」「鼓膜の病的変化があるか」といった観点によって、経過観察、投薬などによる保存的療法、換気のための鼓膜チューブ留置などの診療方法を選ぶのが大まかな流れとなっている。
 ガイドラインは米国や英国にもあるが、日本版の特徴は副鼻腔やアデノイドなど周辺器官にも重きを置いていること。家庭医や小児科医が診ることが多い米英と、耳鼻咽喉科医が診ることが多い日本との違いだ。
 伊藤教授は「原因も症状もさまざまなので、全ての患者に当てはまるわけではないが、治療の方向性を決める一つの指標にはなると思う」と話す。
 滲出性中耳炎は急性中耳炎のような痛みがなく、聴力も極端には落ちないため、患者自身が気付きにくい。「話し掛けても反応が鈍い子」と発達上の問題として誤解されたり、知らないうちに悪化して命の危険につながる真珠腫性中耳炎の原因になったりすることもある。治療でしっかり治しておきたい。

 

■耳に関する無料相談会/来月1日、宇都宮

 日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は3月1日午前11時〜午後4時、宇都宮市宮園町の東武宇都宮百貨店4階駐車場入り口で「耳の日」無料相談会を開く。
 足利赤十字病院の佐々木俊一(ささきしゅんいち)医師、自治医大の中村謙一(なかむらけんいち)医師、獨協医大の柏木隆志(かしわぎたかし)医師が相談に応じる。受け付けは午後3時半まで。