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 2016/02/26/ 下野新聞掲載記事

3月3日は耳の日

“難聴の脳”補聴器で改善

適切な訓練 不可欠

済生会宇都宮病院/新田清一医師に聞く

 加齢とともに少しずつ衰えていく聴力。放置すると、聞こえの脳自体が徐々に衰え、“難聴の脳”になってしまう。そこで活用したいのが補聴器だが、適切なトレーニングをしないと効果が得られない。ポイントについて、済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科の新田清一(しんでんせいいち)医師に聞いた。3月3日は「耳の日」。
 「音は耳で聞いていると思いがちだが、実は脳で聞いているということをよく認識してほしい」。新田医師はこう前置きし、聞こえのメカニズムを説明する。
 耳から入った音は鼓膜を動かし、蝸牛(かぎゅう)という神経で電気に変わる。その電気が脳に届くことで「聞こえた」という状態になる。蝸牛の働きは年齢とともに衰えるため、脳に届く電気も減っていく。この状態が難聴だ。
 蝸牛の衰えを予防・治療する方法はないため、補聴器の出番となるが、問題は、電気が届きづらくなった脳は“難聴の脳”に変化してしまっていること。いきなり補聴器で「もともと聞いていた音量」を入れると、非常に不快に感じてしまう。「補聴器を買ったが、うるさすぎて役に立たない」としまい込んでしまう人も少なくなさそうだ。

 ▽じっくり3カ月
 新田医師は「視力が落ちたら眼鏡をかければすぐに見えるようになるが、聞こえの力は補聴器をつけてもすぐには改善しない。音を忘れていた脳に音を思い出させるには時間がかかる」と説明する。
 そこで必要となるのが補聴器トレーニング。「聞き取りに十分な音量」は人によって異なるが、スタート時は目標値の70%程度に設定する。「快適ではないが、なんとか我慢できるレベル」だ。数日経つと慣れてくるので、1週間後に少し音量を上げる。こうしたペースを繰り返し、約3カ月かけて十分な音量に上げていくのが望ましいやり方だ。
 効果を上げるには、起きている間は常に補聴器をつけることが必要。また、積極的に音のある場所に行き、コミュニケーションを取ることも大事だ。忍耐力や意欲が鍵になる。

 ▽認知症の危険も
 徐々に進む難聴は自覚するのが難しいが、「聞き間違いが多くなった」「テレビのボリュームを上げるようになった」といった心当たりがあったら、要注意。新田医師は「難聴の脳になると、うつ病や認知症の危険率が上がるという研究データも多い」と受診を呼び掛ける。
 日本耳鼻咽喉科学会のホームページでは「補聴器相談医」が検索できる。


■耳に関する無料相談会/来月6日、宇都宮
 日本耳鼻咽喉科学会県地方部会は3月6日午前11時〜午後4時、宇都宮市宮園町の東武宇都宮百貨店4階駐車場入り口で「耳の日」無料相談会を開く。
 済生会宇都宮病院の上野真史(うえのまさふみ)医師、自治医大病院の島田茉莉(しまだまり)医師、獨協医大病院の金谷洋明(かなやひろあき)医師が相談に応じる。