
「耳の日」
自治医大・伊藤教授に聞く
新生児聴覚検査 受診を
新生児約千人に対して1人の確率で見つかる「先天性難聴」。原因はさまざまだが、早期に発見し適切な療育を行えば、言語の発達を助けることができるという。産まれたばかりの子どもには、任意で耳の聞こえ方の状態を調べる「新生児聴覚スクリーニング検査」が行われており、自治医大とちぎ子ども医療センター小児耳鼻咽喉科の伊藤真人(いとうまこと)教授は「早期発見のために必ず受けてほしい」と呼び掛けている。3月3日は「耳の日」。(飯田ちはる)
先天性難聴とは、生まれつき耳の聞こえ方に問題が生じている状態のことを指す。新生児に対して行われている聴覚スクリーニング検査は、子どもが産まれた後、産院などで入院中に行うことが多い。痛みはなく、新生児が寝ている間に検査できる。ただ、任意のため、伊藤教授は「全国の検査率は9割弱と、100%に到達していない」と説明する。
検査を受けると、「パス(異常なし)」もしくは「リファー(要精密検査)」の結果が出る。リファーの原因は遺伝性のほか、先天性サイトメガロウイルス感染症が引き起こす難聴であるケースも少なくない。
この感染症は、妊娠中に母親が感染した結果、胎盤や血液を通して胎児に感染し、産まれてくる子どもの難聴や低体重、視力障害などを引き起こす。この難聴は進行することもあり、伊藤教授は「リファーが出ると動揺してしまい、病院に足が向かない両親もいる。しかし、検査でリファーが出たら、すぐに精密検査を受けてほしい」と強調する。
精密検査などを経て、先天性難聴が診断された場合、その症状の度合いや原因に応じて、補聴器の装着や人工内耳の埋め込み術を検討する。補聴器は「生後半年以内に作るのがベスト。聞こえない状態が長く継続してしまうと、言葉の発達に影響する」と伊藤教授。人工内耳は1歳以降、補聴器を用いても聞こえ方が十分でない場合に、使用するかを判断する。
こうした子どもの難聴に特化した診察を行おうと、自治医科大とちぎ子ども医療センターは4月、「小児難聴外来」を立ち上げる。これまでは、子どもの難聴に対し、同大の耳鼻咽喉科で診察を行っていたが、同センター内に専用の外来を開設することで、小児科との連携をさらに強化する。対象は難聴の精査や治療が必要な子どもで、補聴器や人工内耳の使用などを含めた診察を行う。
伊藤教授は「何より大切なのが早期発見。早く見つけられれば、音のある世界で周りの人とコミュニケーションが取れる可能性が広がる。難聴と分かっても悲観することなく、前向きに治療や療育に取り組んでほしい」と話した。