
頭頸部外科月間
希少な頭頸部がんに注意
口腔や鼻に発生
症状続けば耳鼻咽喉科へ
口腔(こうくう)や鼻などに発生する「頭頸部(けいぶ)がん」。他のがんと比べて少ないため、聞き慣れない人もいるだろう。頭頸部には日常生活を送る上で重要な機能を担う部位が集中しているため、がんの予防や早期発見が重要だ。県立がんセンター頭頸科長の横島一彦(よこしまかずひこ)医師(57)は「のどの痛みやつかえ、違和感、首や舌のしこり、声のかすれなどの症状が長引く場合には、早急に耳鼻咽喉科(がん専門病院では頭頸科)を受診してほしい」と呼び掛けている。7月は「頭頸部外科月間」。(飯田ちはる(いいだちはる))
頭頸部とは、頭蓋底部から上縦隔(胸板の内側、気管の周囲)までを指す。これらの部位に生じるがんを頭頸部がんと呼び、口腔(こうくう)がん、鼻副鼻腔(ふくびくう)がん、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、大唾液腺がんなどがある。
横島医師によると、国内での頭頸部がん発症は、がん全体の約5%のみ。「希少なため認知度が低く、診療や早期発見には難解な部分も多い」。例えば、舌がんのしこりを口内炎、咽頭がんによる喉の痛みを風邪などと自己判断し、悪化してから専門の病院を受診するケースも少なくない。
医療者側も「普段から頭頸部がんを診療していない場合、内視鏡を使って診療をしても咽頭がんを声帯ポリープだと診断してしまうこともある」という。
頭頸部がんの発生には、喫煙や飲酒、口腔内の衛生状態が大きく関わっている。飲み過ぎや吸い過ぎは、リスクを高める要因にもなり得るので注意したい。
意外なところでは、歯の並び方も関係しており、例えば「歯が内側に倒れていると舌とぶつかりやすくなる」。舌が長期間刺激を受け続けると、舌がんのリスクが高まる可能性がある。
頭頸部がんの治療方法は、発生した部位や進行度によって異なる。治療法の選択も画一的ではなく、個人の意思もくみ入れて決定していくため、担当する医師との相談が重要だ。
横島医師はこれまで、頭頸部がんによって話すことや食べること、飲むことの喜びを奪われてしまった患者を数多く診てきた。「一般の方はもちろん、医療者も頭頸部がんの正しい知識を身に付け、早期発見や適切な治療につなげていくことが重要」と話している。
日本耳鼻咽喉科学会は6月、「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」へ改称したことを発表した。同学会は7月を頭頸部外科月間と決め、頭頸部がんの啓発活動に取り組んでいる。