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 2010/02/20/ 下野新聞掲載記事

加齢性難聴 周囲の理解と配慮を

獨協医大深美講師

本人の自覚も大切

 年をとるほどに話し声が聞こえにくくなる加齢性難聴。現段階では補聴器での対処法しかないが、それを好まない高齢者も少なくない。しかし、聞き違いから対人関係に誤解が生じたり、聞こえにくさから孤立するなど心理的影響も大きい。獨協医大耳鼻咽喉・頭頸部外科の深美悟(ふかみさとる)講師は「聞き取りにくさを本人が自覚することと、周囲の気遣いが大事」と話す。3月3日は「耳の日」。耳の役割の大きさを見直してみよう。(若林真佐子(わかばやしまさこ))

 難聴は「伝音難聴」と「感音難聴」に分けられる。「伝音難聴」は音が小さく聞こえるだけだが、「感音難聴」はそれに加えひずんでしまう。
 加齢性難聴は「感音難聴」。内耳や脳に音を伝える聴神経の機能が衰え、聞こえに障害をきたす。50歳以降に両耳とも高音が少しずつ聞こえにくくなり、50代後半に難聴が加速する。話し声(会話の範囲は500〜2000ヘルツ)では高音部分から分かりづらくなる。「ア行」の母音は聞こえるが、「サ行」や「ガ、ザ」など濁音は聞き取りにくくなり、「ア行」に聞こえてしまうことも。さらに、糖尿病などの血管障害が加わると悪化しやすいという。
 現段階では、予防法や投薬などの治療法は確立されていない。そのため、最も大切なのが周囲の優しさと配慮だ。深美さんは「加齢性難聴は病気というより誰しもが通る道」と強調した上で、「難聴の人は一生懸命に聞き取ろうとしているので、文節で区切るなど優しい気持ちでゆっくりはっきり話しかけて」とアドバイスする。
 また、難聴の影響で社会や家族とのコミュニケーションが減ると、閉じこもりがちになったり、考える力が衰えるなどの悪影響もある。周囲の理解は不可欠だ。
 もちろん、本人の自覚も大切。「聞こえがよくなりたいと思わないと解決できない。日常生活に不自由が生じたら、早めに補聴器の装用を考えてほしい」と深美さん。その際は、補聴器外来のある耳鼻科や聴力測定のできる専門店での購入を勧めている。